韓国ドラマ『馬医』

すっかり遅くなってしまいましたが、韓国ドラマ『馬医』の感想を書いてみたいと思います。

ドラマは、朝鮮王朝時代に実在した医師ペク・クァンヒョンをモデルに、馬医から人の医者に、そして王の主治医にまでなった青年の運命を描いています。
ちなみに、馬医は賤民で、馬一頭分よりも価値が低いとされる身分で、しかも人間を治療することは、許されてはいなかったようです。

とにかく、すごく面白いドラマでした。
監督と脚本は『トンイ』と同じ人なので、面白くて当然といえば当然なのかもしれませんが。
まず、ドラマ自体はすごくシリアスなのですが、楽しくほほえましいシーンも多くて、そのあたりも、緩急がうまいなあと思いました。
たとえば、クァンヒョンとヒロイン、チニョンのやりとりなんかは、本人たちに自覚はないのだろうけれど、見ている側としては何かもう、らぶらぶすぎて、笑ってしまうというか、なんというかな感じでした。
ソッキ王女とお付きの尚官(サングン)、そして護衛のマー軍官のやりとりも、これまた笑いなくしては見られない感じでした。
それから、クァンヒョンの、病気の動物や人を放っておけない人柄にも、好感が持てました。

そういえば、このドラマは「情けは人のためならず」という言葉の意味を、具現化したような作品だなあと、見ている間中、思ったものです。
というのも、そうやってクァンヒョンが放っておけなくて助けた人たちが、結局は彼の味方になってくれて、助けてくれる、そういう部分がすごく大きかったと感じられたからです。
といっても、彼の治療方法は外科術で、ネットなどの情報によると、あとにも先にも朝鮮王朝時代に外科手術を施したのは、クァンヒョンだけだったそうで――それだけに、周りの反発も大きく、手術をする時には、本当に大騒ぎになるんです。
でも、手術で助かった人たちは(それ以前に、他の医官から助からないと見放されていたこともあって)、ものすごく彼に感謝して、彼を罪人にしようとする人たちに抗弁してくれたりするのですよね。
もちろん、まずは彼の医療技術と正面から病と向き合うその性格あってのことなのですけれども、でも、まさにやったことが報われる、そういうドラマだったなあと思います。

そんなドラマの中で、常にクァンヒョンを敵視して彼を叩き伏せようとしていたのが、イ・ミョンファンでした。クァンヒョンの実父カン・ドジュンの友人でありながら、彼に無実の罪を着せ、カン家を潰し、クァンヒョンが賤民として生きるしかなくした人物です。
一度は、ドジュンの娘(ということになっていた)チニョンを彼にかわって立派に育てようと決意したこともありましたが……なんというか、意志が弱いというか、臆病なのでしょうかねぇ。
医官としても、けして劣っているわけではなく、実際は馬医の息子だったのに、その優秀さをかわれて両班のイ家の養子になって、医官となり、最終的には首医(スイ=宮殿に仕える医官の長)にまでなって。
少なくとも、清の皇帝の妾妃を治療するあたりまでは、患者にも真剣に向き合っていたように思います。
ただ、左議政(チャイジョン)あたりにあれこれ策謀を吹き込まれると、医者の本分を忘れて、ふらふらっと悪い方へ行ってしまうというか……。
クァンヒョンに対しては、彼がドジュンの息子だとわかるまでも、ずっと悪感情を抱いていましたが、それは結局、彼が自分の身分を少しも卑下しておらず、強い信念と卓越した技術で医術を駆使していることへの、羨望とか嫉妬みたいなものが、あったんじゃないのかなあという気もします。
もちろん、いつも口にしていたとおり「生意気な奴」とむかついていた部分もあっただろうし、賤民のくせに、両班の令嬢であるチニョンを誘惑している、という腹立ちもあるにはあっただろうけれども。
ただ、別の道を選ぶこともできたのに……とも、見ていて思いました。
最初の、世子(セジャ=王太子)謀殺事件の時、ドジュンに罪をかぶせろと言われて、それを承知しなければ、彼の進む道は、もうちょっと明るく真っ直ぐだったんじゃないだろうかと思うのです。

一方、その彼の息子ソンハは、たぶんこのドラマの登場人物の中で、一番いい奴だった んじゃないかと思います。
彼は実質、チニョンの婚約者といってもいい立場にありました。少なくとも、ミョンファンや周囲の者たちは、そのつもりだったんですよね。
でも、彼女がクァンヒョンを好きだと知って身を引き、彼女の本当の身分を知って、それがバレないようにクァンヒョンと協力してかばったり。
ちなみに、チニョンはクァンヒョンの育ての親であるペク・ソックの実の娘で、本当は奴婢の身分なのです。なので、事情がバレると奴婢にされるだけでなく、身分を偽っていたとして罪に問われることにもなります。
なんであの父に、こんないい息子が――と、見ていて何度も思いました。
最後は結局、一人寂しく清へと旅立って行きましたが、清で優しい女性と出会えればいいのになあと、思ったことでした。

ともあれ、最後までハラハラドキドキしっぱなしの全50話でしたが、最終話の最後で、人も馬も区別なく治療するクァンヒョンの姿に、最後まで貫かれたドラマのテーマというか、メッセージを見た気がしました。

NHKのBSプレミアムでの放送も、そろそろ終わりそうなので、いずれは地上波でも見られると思うのですが、今からそれが楽しみだったりする私なのでした。

素材サイト更新

久しぶりに、素材のサイトを更新しました。

金環月蝕 http://moon.websozai.jp/

夏ということで、ガラス系のボーダー壁紙と、おそろいのアイコンをメインに、蝶のボーダー壁紙3種とアイコン2種もアップです。
下は、アップしたものの一部です。










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