映画『犬鳴村』感想

 先日、Amazonプライムにて、映画『犬鳴村』を見たので、その感想を書いておきたいと思います。
以下、ネタバレが含まれますので、これから見ようと考えている方は、ご注意下さい。

映画は、心霊スポットとして有名な犬鳴村をモチーフにして作られたホラー作品です。

主人公・森田奏の兄とその恋人はある日、「地図から消えた村」犬鳴村へと続くトンネルの向こうに行って帰って来る。だが、その日から兄の恋人は様子がおかしくなり、高所から転落死することに。
その後、恋人の死の真相を知るため犬鳴トンネルに向かった兄と弟・康太は行方不明となる。
息子たちの失踪に様子がおかしくなる奏の母。そして何かを隠している様子の父。
奏は真相を知るため、母方の祖父を訪ねるのだが――。

全体としてはホラー感満載で、面白い作品でした。
公衆電話のシーンとか、最後のトンネルでのシーンとかは、なかなか迫力があって、けっこう怖かったです。
ただ、肝心のところがあまりはっきり語られていなかったので、そこがちょっと消化不良だった気はします。
もっとも、それは見ている側にいろいろ想像してほしいというか、想像の余地を残したかったのかな、という気もしますので……制作側が、わかっていてやったことなのかもしれません。

ということで、ここからは私なりの解釈を書いてみます。
謎の青年は奏に、「電力会社の手下が、村人が犬と交わっていたという噂を流した」と言っていましたが、実際にはこの村にはいわゆる『犬神憑き』みたいな一族がいたんじゃないだろうか、と思うのですね。
村人が犬を殺して食べていた、ということも青年の口から語られていますが、それは実際には犬神を作るために蟲毒を行っていたことを隠すためか、あるいは蟲毒によって死んだ犬を本当に食料にしていたかではないかと。
あるいは、近代より前に行われていたそれが、習慣として残って、近代になっても犬を食料にしていたか。
ちなみに蟲毒というのは、壺の中にたくさんの虫を入れて争わせ、最後に残った一匹を呪術に使う、という呪法です。
犬神を作るためには、これを犬でやるのだという話です。
で、その犬神憑きの一族の一人が、奏の祖母の母親――最後の方で奏たちを追いかけて来た、あの女性だったんではないかなと思うのです。
だから、奏の祖母にも奏にも、霊能力のようなものがあったのではないかなと。

あと、後半の奏が青年に連れて行かれた村は、過去の時代の犬鳴村だろうと思います。犬鳴トンネルは、過去の犬鳴村につながっていたってことなんじゃないでしょうか。
ただ、よくわからないのは、奏と青年が村に行った時、兄と康太、それに祖母の母だった女性は閉じ込められていましたが、誰が彼らを閉じ込めたんだろうかと、不思議に思います。
村がダムの底に沈む前だろうから、他にも村人がいて、その人たちがやったのか。
だとしても、なぜ女性は閉じ込められていたんでしょう。
兄と康太は、「村人じゃない怪しい奴」として捕らわれたのかも、とも思いますが……彼女は。
村の外の人間らしい青年との間に子を孕んだことを疎まれたのか、それともそもそも子供を孕んだこと自体を問題視されたのか。
私が思いつくのは、それぐらいなんですが。

ともあれ、奏たち兄弟は青年から赤子を託され、トンネルを抜けて元の世界へと戻ります。
この時点で赤子は、村があった時代の外へ。奏と康太は現代へと戻ります。
奏の話を祖父が信じて、女性と青年の位牌は祖母の墓で共に弔われることになりました。
それより前の奏が祖父と話す場面でも思いましたが、案外祖父は祖母や娘のことでいろいろ不可思議な体験をしてたんじゃないのかなあ、って気がしました。
たぶん、奏の祖母と母は、実際には奏が知らない顔を持っていたんじゃないのかって気が。
奏の母は、兄と康太が行方不明になったあたりから挙動がおかしくなって、犬みたいな行動をしたりするのですが、こういうことが実は昔からあったのでは? と思ったり。
最後の最後で、奏にも牙が生えてましたし、彼女にはもともと霊能力がありましたから。
結局、村の外に出ても、その血は脈々と受け継がれているってことなのかなと思ったりしました。

あと、奏の父親と山野辺先生は、犬鳴村をダムの底に沈めた電力会社側の人間ですよね。そしてたぶん、いろいろと事情とかこれまで起こった怪異現象とかを知っている、と。
つまり、この人たちが口を開いてくれれば、詳しい経緯がわかって見ているこちらはすっきりするのに、なんで話さないんだよ、と見終わって思いました。
特に奏の父親。奏にも問い詰められてるのに、話さない。
なんかモヤモヤする、って感じです、ホント。

なんにせよ、前半の病院で出て来た人たちとか電話ボックスに出て来た人たちとかは、ダムの底に沈められた犬鳴村の村人たちだろうなと思います。
つまり、村人を立ち退かせないで水を入れたのか、それとも一応立ち退き交渉はしたものの、最後まで立ち退かなかった人たちをそのまま水を入れたのか。
おそらくは、前者なんじゃないのかって気はしますが。
だから、怪奇現象が起こっているんだろうし。
それに、謎の青年が言ってますよね。「村の悪い噂を流された」って。
それってつまり、「この村の人間は異常だから、何をしてもOK」って空気を作られたってことじゃないのかなと。

最後、奏の患者だった男の子の実の母親が、犬鳴村の血を引いていた、というのはびっくりでした。
ってことは、この子が奏の患者になったのも、一緒に怪異に遭ったのも偶然じゃなかったってことですよね。
しかも最後、お母さんが友達になりたいって言ってる……みたいなことを男の子が言っていて――奏と犬鳴村とのつながりは、なかなか切れそうにない感じです。
まあ、このあたりはホラー映画の定番的な終わり方なのかな、とも思いましたが。

以上、映画『犬鳴村』の感想でした。

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