このしばらくずっと見続けていた韓国の歴史ドラマ『キム・マンドク』を見終わりました。 全30話とはいえ、なかなか壮大ですばらしい物語でした。
舞台は朝鮮王朝の英祖王と正祖王の時代。 そう、ちょうど今NHKでやっている『イ・サン』と同じ時代です。
主人公は後に済州島の豪商と呼ばれるようになる女性、キム・マンドク。 彼女の子供時代から豪商となるまでの日々を、陰謀やら恋愛やらあれこれからめながら描いたのが、このドラマです。
この先は、ネタバレになりますので、見ようというつもりのある方は、自己責任でお願いします。
最後まで見終わって、まず意外だったのは、悪人たちを含めた登場人物たちの末路というか、行き着いた先ですね。 結局、悪人たちはほとんどが死なずに、生き残りました。
にしても、ホンス父とムンソンがあんなに変わるとは、正直言って思いませんでした。
これまで、『チャングム』にしても『トンイ』にしても、悪人は最後まで悪人のままで、結局は死をもってこれまでの自分の
行いを償うといった感じだったですが、このドラマでは彼らはほとんどが、過去の自分と決別し、まっとうに生きるようにな ります。
対して、ヒロインと最後はゴールインしてめでたしめでたしになるのだろうと思っていた相手役であるホンスが、非業の死を 遂げることになって、これもまた意外というか――ええ?! ここで死んじゃうの? といった感じでした。
ただ、彼の父の改心は、ホンスの死なくしてはあり得ないといえばあり得ず、そういう意味ではこれはなんというか、脚本の 妙なのだなあとも思ったりしました。
それと、マンドクは最終話で全財産を投じて飢饉に苦しむ済州島の人々を救い、その功をたたえられて王から褒美として宮殿 に来ることを許されます。
でも、彼女にとっては本当の褒美は、済州島の人たちが自分の店を閉めると決めた彼女に「店を閉めないでくれ」と言ったそ の言葉だったんじゃないかなあって私は思います。
彼女は王に対しても「自分の元手は人で、今回のことで誰も失っていない。だから、自分は何も損をしていない」と言いきる のですけれど、まさに彼女が得たものは、それにつきるという気がします。
師匠と、世話になっていた東門の大行首が死んで、借金のカタに東門の屋敷も全て取り上げられた後、マンドクが雑炊屋を始
めた時も、そしてその後も、たしかに彼女はずっと「人」に助けられています。
彼女を慕う人々、彼女の元でならば自分の力を発揮できる、人の役に立てると考える人たちが、彼女の元には集って来たわけ です。
そうしたドラマをずっと見ていると、最後、マンドクを宮中へ呼ぶかどうか決めるあたりの王と官僚たちのやりとりは、
ちょっとアホくさいというか……なんかなあって感じでした。
マンドクは、けして誰かに褒められるためにこうした行動に出たわけではないのですよ。 ただ自分自身の信念でもって動いただけで。
もちろん、それは誰にでもできるようなことではないけれど……でも、彼女の考え方は、時代に関係なく真実をついている、と いう気がします。
そう、まさに今のこの時代にも。
残念ながら私は韓国の歴史には疎いので、史実のマンドクがこの後どうやって生きて、一生を終えたのかについては知りませ ん。
でも、ドラマが少しでも実際のマンドクの生き方を描いているのならば、きっと彼女は最後の言葉どおり、済州島で商人とし
て、その信念を貫きつつ生き、生涯を閉じたのではないだろうかと想像します。
もしかしたら、その彼女の後を継いだのは、ムンソンから託されたあの息子だったかもしれない、なんて勝手に思ったりもし ます。 ともあれ、すばらしいドラマを最後まで見ることができて、本当に幸運だったと強く思います。
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