映画『SPACE BATTLESHIP ヤマト』

 先日、映画の実写版ヤマトがテレビで放送されたので、見ました。
 その感想です。
 まず、全体としてはなかなか面白かったです。
 映像的にはすばらしかったですし、実写映画ならではのアレンジとかもうまくできていたと思いました。
 ただ、キムタクの古代進は、「古代進」ではなく「キムタク」だなあって感じでしたけれど(^^;
 まあ、この人は何を演じても「キムタク」でしかない部分があるし、内容には合っていたし、演技が下手とかいうわけではないので、これはこれでいいのだろうとは思います。
 森ユキも、オリジナルの彼女とは、全然性格とか違ってましたしね。
 このあたりは、オリジナルのアニメが放送された時代と今との差だと思います。
 もし作られたのがもっと昔なら、誰が演じていようと、オリジナルに近いキャラクターになっていたかもしれないなと思います。
 ガミラス星人とイスカンダル星人、そしてそれぞれの星の設定がなかなか面白かったです。
 ガミラス星人は外観が、なんとなく気持ち悪くてかえって人型にされるより不気味でした。
 精神生命体という設定も、よかったと思います。
 ただ見終わってからふと気づいたんですが……精神生命体なのなら、地球を改造しなくても、人間に寄生するとか体を乗っ取る方向で侵略できたのでは? と。
 たぶんこのあたりは、オリジナルのあらすじはそのままに、設定だけをいじったために起こった矛盾だったのかもなとは感じますが。
 それにしても、沖田艦長と司令長官の嘘には、ちょっとおいおいと思いました。
 まあ、たしかに古代は放射能を浴びても生きていたわけで、彼らはそれを根拠にしたわけではあります。
 また、イスカンダルに放射能除去装置があるというのは、オリジナルからの大前提ですし、結局それを手に入れることはできたわけですけれども。
 それに、彼らの嘘も、悪意からではなかったのはわかります。
 もし放射能除去装置がなかったら、どっちにしても人類は絶滅するのだから、彼らの死も無駄死にとかいう話以前のことで……気持ちはわからなくもないけれど。
 でもやっぱり、うわ~という感じはありました。
 沖田艦長の最後のセリフとか、音楽とかデスラーの声とか、オリジナルのヤマトファンにはうれしい部分もたくさんあって、それもまたよかったと思います。
 ただ「バカメ」の使い方は、違うと思いました(笑)。
 あれはやっぱり、ガミラス艦に対して言わないと(爆)。
 あと、地球としばらく交信できなくなるからと、乗組員全員が地球の家族と話をするシーン、あれはオリジナルの方でもあったけれど、ただ黙って暗い画面を眺めているだけ、というもので、映画同様にちょっとせつないものでしたね。
 ただ、映画の方ではそんなふうに天涯孤独な彼が、ユキと出会い、ヤマトのクルーと出会って、守りたいものを得てあのラストに行き着くといった、自然な流れを描く一つのエピソードになっていたような気がします。
 ところで、映画を見終わってから感じたのですが。
 昔、オリジナルのアニメが有名になったころ、よく「テーマは愛だ」と喧伝されて、終盤の方での古代の「俺たちがしなければならなかったのは、戦うことではなく、愛し合うことだったんだ」というセリフが、その象徴のように取り沙汰されてました。
 でも私は、当時からこのセリフやテーマになんとなく違和感を感じていて、でもずっとそれがなぜだかわからなかったんです。
 そのことを、この映画を見終わった後、考えていて何かちょっとわかったような気がしました。
 「戦う」の対義語は「愛」じゃなくて、「赦す」だって思うんですよ。
 それで、愛のかわりに「赦す」を入れてみました。
「俺たちがしなければならなかったのは、戦うことではなく、赦しあうことだったんだ」
 そうすると、自分的にはすごくしっくり来ることに気づきました。
 「赦す」というのは、相手の立場や心情を理解して受け入れること、だと思うのです。
 たしかに、住環境がまったく違うガミラス人と地球人が、理解しあって共存するというのは、難しいことかもしれません。
 人類の側から言えばガミラスは、いきなり攻撃して来て、地球の環境をめちゃくちゃにした相手ですしね。それを赦して受け入れるというのは、かなり難しいとも思います。
 それでも、そんな言葉が口から出てしまうほどに、戦いは恐ろしく何も生み出さず、むなしいものなのだと――そんなふうに、当時あのアニメを見た自分は感じたのかもしれないなあと、改めて思いました。
 そして、時代的なものもあって、オリジナルのヤマトは、「愛」にしろ「赦し」にしろ、そんな大きなテーマを語るには、ちょっと舌足らずだったってことなのかもしれないな、とも感じました。
 一方、この映画では、案外その「ヤマトのテーマ」と当時言われた「愛」が描かれていたんではないかとも、思いました。
 最後、一人残って敵と対峙する古代の心にあったのは、敵への憎しみでもなければ、彼らを赦したいなんて思いでもなく、故郷を守りたいって気持ちだったように思います。
 そしてでも、それの方が「愛」に近い感じが私にはしました。
 最後、緑に戻った地球で、ユキは古代との子供を育てている、そんなシーンで終わりましたけど、古代が守った地球で、彼らはこの先生きて行くわけですよね。
 それは、古代の愛によって生きている、というふうに私には感じられました。
 ともあれ、思っていたよりはずっと面白く、最後まで飽きることなく見ることができた映画でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿

映画『きさらぎ駅』感想

本日は、Amazonプライムにて 映画『きさらぎ駅』 を見たので、感想を書いておきたいと思います。 ネタバレを含みますので、まだ見てなくて見たいと思っている方は、ご注意下さい。