韓国ドラマ『ミヘギョル』の部分的感想

このしばらく、スマフォで韓国ドラマ『ミヘギョル~知られざる朝鮮王朝~』を見ています。
これは、15代・光海君(クァンヘグン)の時代を舞台に、不思議な事件を追う4人の男女の物語で、昔流行した『Xファイル』というか、特撮ファンには『怪奇大作戦』というと理解しやすいようなお話です。
で、先日からその6~8話を見たのですが、これがまたなんというか、すごく面白いというか、不思議というか、多層的というかな作りになっていて、それについて書いておきたくなったというわけです。

6話で、雨の日に鬼神が出て祟りを成すと言われる屋敷の調査を依頼された、主人公のキム・ヒョンドたち。怪異に出会いながらも、メンバーの1人ホ・ユニは、天井に収められた御符が朝鮮のものではなく、外国の魔方陣であることに気づきます。また、庭の一画に枯れ井戸があり、そこにこの屋敷の前の持ち主の遺骸があることも発見します。
続く7話では、一転して都で行方不明者たちが発見されると同時に、自害する事件が続いている状況の中、両班(リャンバン=貴族)の令嬢と共に逃げた下人がやはり発見されて、自害したことが語られます。 下人の死体を調べたヒョンドは、事件を調べることに。
そんな彼を仲間のチャン・マンが案内したのは、白丁(ペクチョン=賎民)たちの住むパン村でした。チャンと分かれ、そこの画房でお茶を飲んだヒョンドは、逃げた令嬢と下人がひどい目に遭う姿を目撃すると共に、ユニにそっくりの女に出会います。
女は彼に、令嬢と下人の境遇はここでは永遠に繰り返されるのだと教えます。
それを聞いてヒョンドは苦労の末、令嬢と下人を助けますが、今度は自分が2人に殺されてしまうことになり――今度は自分もその永遠に繰り返す行程の中に取り込まれてしまいます。
最終的には、彼はその不思議な場所から脱出し、元の世界に戻ります。
一方8話では、彼が行方不明になっている間の、ユニやチャンらの行動が語られるのですが……ここでユニは、ボスであるチ・スンから、150年も生きているといわれる預言者の老人に引き合わされます。
この預言者は、いくつかの駆け引きのあと彼女に「おまえを中心とした、おまえの望む未来を作ってやろう」と言います。
最終的には、この話はチャンが6話で屋敷の調査を依頼した両班の男に刺されたことをきっかけに、6話とつながっていたことが判明します。
両班の男は、拉致した人間を自害させて、都に巨大な魔方陣を描こうとしていたのでした。ようするに、クーデターのようなことをたくらんでいたのだと思われます。
そんなこんなで、ヒョンドはユニとチャンの2人に、鬼神が祟るという屋敷の庭の枯れ井戸にいるのを発見され、助けられたのでした。

で、私がこの3話を見て、つらつらと思ったことですが。
まず、屋敷はおそらく、あの「時間の迷宮」のような不思議な世界とつながっているのだろうと思います。6話で、屋敷を調べるユニの前に突然現れて、また消えたのは、下人と逃げた令嬢でしたし、最後はヒョンドもここの井戸で発見されています。
それから、ヒョンドが会った画房の主は、あの預言者の老人のような気がします。
画房には、ユニそっくりの女の絵と、輿から血まみれの男の手が出ているのを、武器を手に見詰めている男女の姿を描いた絵がありましたが、もう一つ、パン村の一画で左右に分かれるビョンドとチャンらしい人物の絵もあったのです。
おそらく、この画房は「現代」と「未来」の両方の時間の重なっている場所で、ここで「現代」の方の画房の主から幻覚剤入りのお茶を飲まされたヒョンドは完全に意識を失い、「未来」へ行ってしまったのではないかという気がします。
私は最初、彼が迷い込んだのは過去なのかな? と思っていたのですが(ユニが彼を初対面だと言っていたので)、8話を見ると、未来だということがわかります。
あと、彼が迷い込んだのが未来であることは、ユニのいる本屋の表に貼られた人相書きでもわかります。
「現代」ではそこには、逃げた令嬢の人相書きが貼られていて、途中、一瞬だけ「現代」と「未来」の中間の時間が描かれるのですが、その時には令嬢の人相書きは半分破れており、その下に剥がれて破れ、ボロボロになった男の人相書きが見えます。そしてヒョンドが迷い込んだ世界では、令嬢の人相書きは完全になくなっています。
あと、ユニの背中に8話で負う傷の痕があったり、首に8話の最後で取り戻すペンダントがかかっていたり、というあたりも、そこが未来であることを示しています。
ただし、この「未来」は本物ではなくて、8話で出て来た預言者の男が作ったもので、時間の迷宮といってもいいようなものだと思います。
だから、同じことが何度も繰り返されるわけです。
更に言えば、7話の途中でユニが、件の預言者(といっても、相手の姿は見えない状態でしたが)と話しているシーンがあって、そこで彼女は「これは私の望む未来ではありません」と言っています。
結局、「現代」のユニたちが屋敷の井戸にいる彼(の体)を発見して呼びかけたことで、「現代」への扉が開きます。
たぶん、戻るための鍵は、ユニと彼女の持っていたペンダントなのではないかと思います。
というのも、6話の最後でユニはこのペンダントを井戸の中でなくしているのですが、7話の最後ではヒョンドは「未来」のユニからこのペンダントを渡されます。そして、意識が戻った彼は、「現代」のユニの胸にその同じペンダントがあるのを見るのです。

この一連のドラマの秀逸なところは、まず、物語の順番にあると思います。
端的に言えば、7話はヒョンドの精神世界、8話は現実での物語ではあるのですが、一方では7話で提示された不思議な物語を、8話で絵解きしてもいるというわけです。
しかも、それ以前にまず6話で一見すると別の話のような謎を提示しておき、8話では実はこれこそが事件の大元だったことを明かし立てる仕組みになっているのですから。
あと、小道具の使い方がうまいと思いました。
本屋の表の人相書きや、画房に置かれている絵、割れた茶器、ユニのペンダントなどなど。
それらが、さりげなく物語の不思議さや謎を煽ったり、「現代」と「未来」の区別をつけさせたり、ということをしているんだなあと。

このドラマを見始めた時には、歴史ドラマでこういう『怪奇大作戦』のような作品を作るなんて、すごいなあと、ただ単純に思ったのみでしたが、今回のこの三つの話を見るに至って、なんというか、改めて韓国ドラマってスゲーと思いました。
歴史上の人物を主人公にしたものもすごく面白いですが、こういう日本だと子供向けの特撮番組でしかやらないような内容を(いや、それだって今は全然作られてない)、ちゃんと大人の視聴に耐え得るような形で作って放送するってこと自体がすごいと思うし、とにかくホラー・サスペンス好きにはたまらんなあと思ったことでした。

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