韓国ドラマ『根の深い木』

このしばらく、スマホで見てました韓国ドラマ『根の深い木』を見終わりましたので、感想を書きたいと思います。

このドラマは、韓国王朝第4代国・王世宗(セジョン)大王ことイ・ドの、ハングル創成にまつわる物語で、全体として「壮絶な」という形容詞が似合う作品だったと思います。
全24話なのですが、内容的には50話、60話ある歴史ドラマと変わらないほど濃かった気がします。
まず、主人公であるイ・ドは、これまで見た韓国の歴史ドラマのどの王様よりも葛藤し、悩み、苦しむ姿が描かれていたように感じました。
ちなみにこのドラマ、主となる人物はオープニングにも登場するとおり、イ・ドとカン・チェユンことトルボクと、ソイことタム、それにもう一人の四人だけなのです。
脇役も、それぞれ味のある人物が登場しますが、この四人の関係が、この物語を引っ張って行っているのだと言っていいかと思います。
イ・ドはトルボクの心底からの怒りの叫びによって、父に反旗をひるがえし、タムの存在があったればこそ、文字創成を始めたのだと思います。
一方で、敵であるはずのチョン・ギジュンこそが、最もイ・ドを理解しているのではないか、とも後半を見ていて思いました。
二人はなんだか、コインの裏表のようで、同じものを見ているのに、そこから導き出す答えは正反対というか……そんな感じがしました。

ところで、このドラマには脇役でけっこう、今まで見た韓国ドラマに出ている俳優さんたちが出ているのですが、改めてチョ・マルセン役のイ・ジェヨンが、好きだな~と思いました。
この方、『イ・サン』で チャン・テウを演じていた方で、当時は単純にチャン・テウにおお~って感じだったのですが。
他の韓国ドラマでもちょくちょく見かけていて、実は今回初めて名前を知りました。
今回のマルセンは、堅物のように見えて、実はけっこう策士な感じで、トルボクの作戦に協力したり、イ・ドに協力して一芝居打ったりと、小回りの利く人物でした。
最初登場した時は、先王の側近で、イ・ドに対してもきつい感じで、悪役なのかなと思ってましたが、実はそうでもなく。
見ていて、ますます役者さんのファンになってしまったのでした。

最終回は、まさに壮絶で――まあ、なんとなく、今まで北方で兵士として殺戮に明け暮れて来たトルボクが、普通の生活送るって、無理なんじゃあ……とは思っていましたが、それにしてもこんなふうになるとは。
最後の最後に出て来たシーンは、いわばCDとかのボーナストラックみたいなもんかなあと感じました。
それはけして悪くはないし、個人的には「こんな未来もあったんだよなあ」と思ったりもしました。
が、これはアジアの作品だからこその、ボーナストラックかも、とも見終わってちょっと思いました。
欧米だと、「あの世」とかって一般的じゃないからか、あんまりこういうのって、ない気がしたので。

あと、トルボクが思いついた文字の広め方が……日本の環の方法って言ってたけど、もしかして『リング』なの? とちょっと思って、そこはさすがに笑ってしまいました。
いや、結局その方法が、一番広まるの早かったみたいですけど。
それとも、あの時代から日本にはチェーンレターのようなものがあったんだろうか……(-_-;)
まあ、歴史的根拠はなくって、単なる脚本家とか監督の茶目っ気、だったのかもしれませんけれどもね。

ともあれ、のちにハングルと呼ばれることになる文字は、朝鮮王朝の民の間に広がり、一人になってしまったイ・ドは、ただ王としての役目を邁進し続けることになります。
ネットで検索してみたところ、世宗大王は朝鮮王朝の中で一番の名君として歴史に残っており、彼の御世は太平だったとか。
でもその裏には、己の葛藤や周囲の思惑なんかを押さえつけ、退けるだけの強い意志があってのことだったのかもなあと、思った次第です。

最初から最後まで、手に汗握る、ドキドキハラハラのこのドラマを見られてよかったと思いました。
そして改めて「文字」というものについて、いろいろ考えさせられた作品でもありました。

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