小説『本好きの下克上 第三部』感想

さて、今回は『本好きの下克上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』第三部『領主の養女』の感想です。
読み終えてから少し時間が経っているので、印象が薄くなっている部分もありますが、とりあえず書いてみます。

まずは、あらすじです。
神殿の青色巫女見習いから、貴族の娘、そして領主の養女となりローゼマインと名を改めたマインは、新しい神殿長となって印刷業を広めていくために邁進します。
また、領主の城では子供向けの聖典絵本やカルタ、トランプなどを教材として子供たちの教育にも励むのでした。

というわけで、三部は貴族社会に入ることになったマインの日常のお話です。
まず印象深かったのは、ハッセにまつわるエピソードの数々でしょうか。
前神殿長の死を知らず、その後ろ盾がまだあると思い込んでいる町長によるあれこれと、なんとか町の人たちを救いたいと考えて方策を練るローゼマインに、読んでいてハラハラさせられました。
にしても、町長とその一派の最後はちょっとぞっとしましたね。
なんというか、ホントに貴族が平民の殺生与奪の権限を握っているんだなあって感じで。
あと、前神殿長はホントにろくなことしてないというか……。
まあ、彼自身がちゃんとした貴族の在り方を学んでいないわけなので、しかたがない部分もあるのかもだけど、それにしても……な感じでした。

次に印象深かったのは、領主の息子のヴィルフリートがローゼマインと一日やることを交代する話ですね。
よくある、「相手を羨ましがっていたのが入れ替わってみたらとても大変でした」的な内容なのですが、それだけではなくて、ローゼマインの神殿での日常と、ヴィルフリートのダメダメぶりが同時に浮き彫りになるという仕掛けになっています。
その結果、神官長からは今のヴィルフリートを次期領主にするのは無理だという宣告がなされて、ヴィルフリートは今までさぼっていた勉強を、懸命にするようになるのでした。

ユレーヴェ用の素材集めも、読んでいて楽しかったですね。
ハラハラドキドキと手に汗握る話もあれば、すごく幻想的で美しい話もあって、ファンタジーらしさを堪能できました。
あと、なんだかんだと神官長がかっこいいですv

神官長といえば、この三部では還俗して貴族に戻ります。
そして、フェシュピールのコンサートをやったり、ひそかにその絵姿が貴婦人たちの間でブロマイド化して飛ぶように売れたり、という読んでいてとても楽しいというか、面白いことになります。
このあたり、読みながら「三部もアニメでやってほしいよな~」と強く思いましたね。

そんなローゼマインや神官長の日常が綴られて行く三部ですが、領主の姉で他領に嫁いでいるゲオルギーネがやって来たあたりから、徐々にきな臭い雰囲気が漂い始めます。
ヴィルフリートが罠にはまって、入ってはいけない場所に足を踏み入れてしまったり、彼の妹シャルロッテが誘拐されそうになったり。
そして、シャルロッテを助けようとしたローゼマインも捕らわれてしまいます。
このあたり、たぶんシャルロッテ誘拐はローゼマインを誘い出すための罠だったんだろうなあと、読みながら思いました。
それと、拉致した犯人はどうも彼女が本当は平民だと知っているような感じがしました。
あと、飲ませた薬ですが、実際は毒薬ではなくて体の自由を奪う、筋弛緩剤とかそんな感じの薬だったのではないかなと。ただ、彼女は体が小さい上に、もともと虚弱なので効きすぎて、死にかかった――ということかなと。
いやだって、殺すのが目的だったら、そのままどこかに運ぼうとはしないはずですし。
たぶん、犯人の目的というか目当ては彼女の豊富な魔力だったでしょうから、殺してしまっては元も子もないと思いますし。

そういえば、最初の方で神官長がローゼマインの体を調べて、彼女が何度か死んだことがある、という話をするシーンがあります。
で、思ったのですが。
きっと本来の、というか本当のマインは、すでに死んでいるのだろうなと。
第一部で麗乃がマインとして目覚めた時、マインの母・エーファは彼女の熱が冷めて意識が戻ったことに安堵しています。
そして、麗乃にとってはこれがマインとしての最初の意識なわけですから、つまり、死んでからっぽになったマインの体に麗乃の意識というか魂が入って、マインとして生活し始めた――ということなのではないのかなと。

ともあれ、飲まされた薬のせいで死の淵に立たされたローゼマインは、健康になるために用意してあったユレーヴェに浸かり、眠りに就くことになったのでした。

現在は第四部を読んでいますが、相変わらず面白いです。
そして、「アニメでも見たいよな~」などと思う日々。
とりあえず、4月からは二部のアニメが始まりますので、そちらを楽しみにしておきたいと思います。

ということで、感想でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注目の投稿

映画『きさらぎ駅』感想

本日は、Amazonプライムにて 映画『きさらぎ駅』 を見たので、感想を書いておきたいと思います。 ネタバレを含みますので、まだ見てなくて見たいと思っている方は、ご注意下さい。