爪を切る話

「夜中に爪を切ると親の死に目に遭えない」という言い伝え(?)があります。……というか、私は小さい時、祖母からそんなことを言われました。あと、「夜、口笛を吹くと鬼が出る」とか。
もちろん、迷信といえば迷信なのかもしれませんが、私は昔からわりとそういうことを気にするタイプで、大人になってからも、夜中に爪を切ったことがありませんでした。

で、先日。すでに夜中の零時を回る時間帯に、ふと足を見るとけっこう爪が伸びているんですよね。「ああ、切らなけりゃ」と思い、時計を見て、「夜中はまずいから、明日の朝にしよう」と思って……一人苦笑してしまいました。
親の死に目って……もう、いないんですよ。父も母も。
母は、ほんの半月前に見送ったばかりです。
夜中に爪を切らなかったのが幸いしたのかどうか、どちらも最後まで見取ることはできましたが……。なんにせよ、もう守ったところで意味のない言い伝えになってしまいました。
ああ、そうなんだよなあ……と思いつつ、でもやっぱり、爪は明日の朝切ることにして、その夜は、そのまま寝た私でした。

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