韓国ドラマ『イ・サン』

少し遅くなりましたが、韓国の歴史ドラマ『イ・サン』の感想など書いてみたいと思います。

まず全体としては、長さを感じさせない面白さと壮大さを持った作品だったと思います。
何事も、新しいことをやろうとすると大変なのは当然だと思うのですが、サンの場合はまずスタートから不利な立場だったり、周囲が敵だらけだったりと、本当に大変だった気がします。
でも、そんな中で少しもゆがむことなく、しかも王としてもとても公平でまともというか、あの時代からすると革新的といってもいい思想の持ち主であったことも、サンのすごいところだなとふり返ってみて思います。

で、ここからは印象に残ったエピソードや人物について、書いて行きたいと思います。
まず、一番いろいろ言いたいのは、ホン・グギョンですね。
後半のサンが王となってからの彼は、あまりにも周囲が見えなくなっていた気がします。
いやまあ、このあたりはおそらく史実なのだろうとは思うのですけれど、それにしても。
彼の零落は、そもそも妹の想像妊娠のあたりから始まるように、私には思えます。
いや、あの妹も彼と本当に血がつながっているんかと思うほど、アホといえばアホな気がしますけど(ソンヨンを呼びつけて、意地悪したりとかさ。毅然としていればいいのに、いちいち行動に移し過ぎな気が)、想像妊娠の件は、いさめなかったグギョンも悪いと思うのですよ。
あそこで、妹をいさめ、主治医を連れてサンの母やサンに事実を告げて頭を下げれば、あそこまで大事にはならなかっただろうにと思うのですね。
なのに彼は、隠蔽工作に走り、結果として妹が死ぬことになり、それを王妃のせいだと逆恨みしたりしています。
が、ここは本当は王妃の方が彼を恨んでも当然だと思うのですけど。
だって彼は、妹のニセ流産を王妃の仕業にしようとしてたわけで、もしソンヨンとチョビが薬の話を耳にしていなければ、王妃が罪に問われたかもしれないのですから。
それに、グギョンの妹の謝罪を受け入れなかったのはサンの母であって、王妃ではないのだし、どちらにせよ王妃の取った行動は、彼にとやかく言われるようなものではないと思います。
ともあれ、このあたりからもう彼は周囲の状況もサンの望みも、まったく見えなくなっていたんだろうなあと感じます。
そのあげく、本来は敵である大妃のたくらみにまんまと乗せられて、少し調べればわかることも彼女の言葉を鵜呑みにして、とうとう最後には謀反人として流刑の末、病死ということになってしまったわけで。
彼が王妃を殺そうとしていたことを知った時のサンのショックを思うと、これほど信頼されていながらなぜに、と本当に思わずにはいられませんでした。
結局、あまりにも大きな権力を得てしまったがために、タガがはずれたってことだったのかなあと、考えたりもしています。

彼の後に登場した、チョン・ヤギョンは、彼に較べるともうちょっとお気楽というか、権力そのものよりも、王に仕えることの方に意義を見いだすというか、楽しみを持っているタイプのように見えました。
チャン・テウたちとも、けっこううまくやっているっぽい感じでしたしね。
グギョンにも、もうちょっと彼のような部分があったら、あんなことにはならなかったのかもしれません。

ところで、グギョンからは目の敵のようにされていたチャン・テウですが、私はこの人物、けっこう好きでした。
最初は悪役かと思ったものの、グギョンのせいにするために人殺しを行ったミン・ジュシクを破門にしたりと、実は一本筋の通った人物で、なるほどサンが重用しようと考えるはずだと納得しました。
それからトファソの人々のやりとりは、いつも明るくて楽しく見てました。
イチョンともう一人のやりとりとかね。後半は、ソンヨンがここの人ではなくなってしまったので、前半ほど頻繁には登場しなかったのが、ちょっと残念でした。

ソンヨンに関しては、ようやく側室になってしかも息子が世子になって、よかったなあと思ったのもつかの間、息子は死んでしまうわ、自分も病死するわでちょっとあっけなかったなあという感じでした。
そういえば、彼女がサンを想うシーンなんかでよく出て来る曲は、歌詞がイマイチ二人の状況にあってない気がしました。それに、歌詞をわざわざ下に日本語で出さなくてもいいと思いました。なんか、ドラマ見ている気分がそがれてしまうというか。
歌詞さえ出なければ、韓国語だから意味がわからず、聞き流せるのになあと。

最後、テスだけが取り残された感じで、ちょっとかわいそうな気もしました。
もちろん彼は、サンの言葉どおり、新しい王となった彼の息子を助けて行くのだろうとは思いますけれどもね。
でも、愛したソンヨンも、誰より尊崇していたサンも亡くなり、一人になっちゃったなあという感じが。
まあ、新しい王をはじめとして、彼が見守り育てて行かなければならない子供たちもいれば、彼を尊敬する部下たちも、そして友人たちもたくさん周囲にいるんだといえば、そうなのだろうけれども。
そういえば、グギョンが謀反人の道を突っ走っていたころ、私はよく彼がテスのようだったらこうはならなかっただろうにと思ったりしてました。
テスはたしかに、頭はそれほどよくなかったかもしれないけれど、何が本当に大切なのかを、ちゃんとわかっていた気がします。
彼ならば、もしグギョンと同じ立場(妹が側室で、想像妊娠してしまった)だったら、まずは主治医を連れて、サンの元へ真実を告げに行くと思うのです。だってそれが、サンに対して一番誠実である道だから。

ちょっと感想の内容が後半の分に偏ってしまった気もしますが……前半の王妃(後の大妃)やファワンらの陰謀と、それをなんとかして白日の元にさらそうとするサンたちとの攻防戦や、ソンヨンやテスの活躍ぶりにも、とてもドキドキハラハラさせられました。

そんなわけで、『イ・サン』全77話。とても楽しく見ることができました。

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